セーラーカラー

昨日まで得意だった歌

突然かすれて咳き込んだ

昨日のことのように今でも覚えている

痛みと 夏の香り

 

初めての恋は2年前に

始まりもせずに終わりました

教科書の通りに背が伸びて

想われニキビもできました

 

授業で聞いたあのソプラノが聴きたくて

カラオケに君を誘ったまではよかった

メガネの奥 ずっと 目が離せなくて

速くなる鼓動 気づかないわけがなかった

 

一秒一秒があまりに長くて

鮮やかな音 熱すぎる風 焼きついて離れない

「一度きりだから輝いてた」

なんて言葉じゃとても表せない夏が

確かにあったんだ

 

少しからかうと ムキになると知って

憎たらしいセリフをぶつけていたら 

突然思いつめた表情

焦る私を見て君が笑った

「なるほど、たまには 可愛い顔するんだね」

 

夏服の襟よ 風に逆立って

こんな表情 隠してくれと柄にもなく願う

「今しかないから砕け散ってみろ」って

大人になった私からの声は聞こえていなかった

 

簡単な言葉でいいのに たった2文字でいいのに

得意なはずの国語も  役に立たないじゃないか

君が素敵な誰かと 手と繋いで歩いても

「そばにいられたらそれでいい」

あまりにも下手な嘘

 

一秒一秒があまりに長くて

鮮やかな音 熱すぎる風 焼きついて離れない

「一度きりだから、ちゃんと聞いていて」

早口になる 絞り出した言葉

 

夏服の襟を ひるがえし走った

君の答えと 照れた口元

もうどうしようもなかった

「一度きりだから輝いてた」

なんて言葉じゃとても表せない夏が

確かにあったんだ

 

あの時の恋は3年後に

雨が止むように終わりました

一足早い真夏日に

長かった髪を切りました